「あたしだってそこまでバカじゃない…ずっと知らないフリしてた。慶さんに嫌われたくなくて」
もちろん、お姉ちゃんのことは知らなかった。
でも…その他にもあたしは慶さんの触れてはいけない部分を知っている。
それは……
「っ、」
あたしは慶さんの背中の傷をそっと撫でた。
数センチだけど、何かに切られたような跡が残っている。
すると、くすぐったかったのかなんなのかゾクッと動いた慶さん。
なんの傷なのか…ずっと聞けずにいた。
「お姉ちゃんのことは知らなかったけど、この傷のことだって、時々切なそうな表情をすることも気づいてた」
世の中知らなくてもいいこともある、なんて言葉があるけどそんなの綺麗ごとだ。
たとえ、知らされる真実が何だろうと相手のことを受け止めることが大事だと思う。
「…萩花…」
「あたしは、受け止める覚悟はできてる」