「まさかこの店の改装祝いにオリバーさんの花を届けてもらえることになるなんてなあ」

「とても光栄だ」と歯を見せて笑う店主に「こちらこそ選んでもらえて光栄じゃ」とオリバーは握手を求めた。


「本当におめでとう、リュート」

「ありがとう」


握手を交わしたリュートはリルを見つけて「お嬢さん、見かけない顔だなあ」と不思議そうな顔をした。

それを見たリルは慌てて名乗る。


「私、リルと言います。今日からフルリエルで働かせてもらうことになって…」

そこまで聞いたリュートは「そいつは驚いた!」と大きな声をあげる。


「フルリエルで働く奴なんざあ、初めて聞いたぜ。あのオリバー・ラビガータが自分の店で働かせると認めたってこったあ、お嬢ちゃん相当腕が立つんだな」


嫌味ではなく心から期待するその言葉にリルは身を固くして、フルリエルという花屋の凄さを思い知る。昨日シオンが言っていた言葉は伊達じゃなかった。


「訳あって今日から働く新入りじゃ。そんな大したもんじゃないわい」

嘆くようなオリバーの言葉にリルは苦笑いしたが、リュートは「でも可能性があるから受け入れたんだろ?」と笑った。


「うちのもしっかりしてくれりゃあいいんだがなあ」


ふっと笑顔が消え遠い目をしたリュートの言葉が気になって、どうしたのかと聞こうとしたときだった。

ガッシャンと何かがぶつかったような大きな音が店の奥から聞こえてきた。

何事かと身構えるリルを余所に、リュートは溜め息を吐くと「またやりやがった」と舌打ちした。


「アーディ!」