「……どうした?」


「ねぇ、慶さん…どこにも行かないで。
あたしを一人にしないで…ずっとそばにいて」



久しぶりに吐いた本音。
慶さんにはなぜか本音を吐ける。


家族には遠慮ばかりして本当の気持ちはいつだって心の奥にしまい込んでいた。


離れていく家族を追いかけて引き止めることが一度もできなかった。


『今日くらいは家にいてよ』


たった一言、それだけだったのに。


いつも『いってらっしゃい』と見送るだけで。
ずっと、孤独を感じていた。



「…萩花、急に甘えん坊だな。可愛いやつ」


「うっとうしくなるくらい
あたしのこと好きになってよ」



こんなのいつものあたしなら言えない。
だけど、今は誰かに甘えたい気分だった。


甘えられる人が普段いないからどうしても慶さんには甘えがちになる。