「聞きたい?」

「聞かない」


……言いたいことならだいたいわかるから。


「なんで? そんなにボクの話、つまんない?」

「というよりは、さっきから先生が何回もこっち見て舌打ちしてるのが気になるよね」

「先生邪魔しないでほしいなぁ、いま大事な話をしてるから」

「あんたがあたしの邪魔するな」

「だからね、梁ちゃん。つまるところ、現実の梁ちゃんに、ボクの願望すべて叶えてもらいたいんだ。さっそく今夜にでも。ボクと愛の営――」

「聞かないってば!!」


思わず大きな声を出してしまったあと


「……板野。25P全文読みなさい」


先生があたしにそう告げた。


それを聞いたアイツが嬉しそうにあたしを見たのは、言うまでもない。


手には、スマホ。


録音のスタンバイ画面が表示されている。


……先生、本読みする前にコイツつまみ出してくれませんか。