「わたしは、ルノくんのこともルアくんのことも。

……もちろんみんなのことも、まだよく知らないから、言える立場じゃないけど、」



「……うん」



「それがもし、本当なら。

ルノくんの"心配"を。偽善ぶった言葉だって、"罪悪感"なんてすりかえられるのは、納得がいかない」



築いてきた双子の関係は、双子にだけ特別なもので。

他人が口をはさんでいいことじゃない。だけど。あの優しいルノくんの大事な感情を、大事な片割れが傷つけてしまったら、元も子もない。



「ルノくんは、ルアくんの話をするとき、すごく大切そうに話してくれる。

……罪悪感を口にして罪から逃れようとするほど、ルノくんは弱くない」



「……そうだね」



わたしだって「姫」なんて立場を与えられて、いい顔はされない。

だけど耳にする噂の中には、双子の片割れの話もあった。




ルノくんがルアくんの分まで仕事をして、本当はエリートでもない双子の弟をロイヤル部としてかばってるんじゃないかって、そんなふざけた話。

王子って名前だけでロイヤル部に入れたって、聞いているだけでカッと頭に血が上りそうな噂話も。



どちらかが悪く言われるたび、片割れまで引きずり込まれる。

ルノくんはそれでも、ルアくんのことを大事に思ってた。



本当にただかばってたわけじゃないって、わたしはそう信じたいの。

そこに損得なんて生まれなくていい。わたしが言ったらみんなに「きれいごと」って言われてしまうかもしれないけど、それでも"みんな"を信じたかった。



「……ぼくと、ルノの名字は、八王子でしょ?」



「うん、」



なめらかな声で紡がれる。

きっとこのまま真実を教えてくれるんだろう、と。──何の脈絡もなく、ただそう思った。



「王学の理事長は、八王子マヤ。

……ぼくとルノの、父親なんだよ」