でも、どうして私はこの人の馬に乗せられたんだろう?

首を傾げていたら、前方に城下町の明かりが見えてきた。

それから、走るように近づいてきた一団も。

ああ、やっと……。

「王弟殿下! ご無事でしたか!」

叫ぶのは彼の親衛隊のひとりかな。黒い制服に、近衛兵団の腕章がチラリと見えてホッとした。

それから、いつの間にか強く握りしめていた彼のマントから手を離す。

「ありがとうございます。私はここでいいですので、このままお行きくださいませ。早く冷えきった身体を暖めなくては……」

「何を言っているんですか。それはあなたもでしょう?」

驚いたような彼を見上げ、目を細める。

「王家の血筋の盾となれれば本望。父も喜ぶはずで……」

やって来た近衛兵団に任せようと、馬から降りようとしたけれど、力が入らずに不思議に思う。

あれ?と、そう思った時には視界が真っ暗になっていて、どこか遠くで誰かの怒ったような声を聞いた。