そんな話が交わされているのとは全く無関係のように、生徒達は今日も授業を終えて教室を出て行く。

部活に向かう者、寄り道してお茶していく者、十人十色の放課後ライフだ。

「ぽぽちゃんはどうするの?真っ直ぐ帰るの?」

夕方になり、少し調子が出てきたのだろうか。

ぱっちりと開いた瞳で蒲公英を見ながら、ルナが言う。

蒲公英曰く、『朝は可愛くて夜は美人』のルナである。

それ完璧じゃね?

「うん、今日は早目に帰るよ。私んち、今夜の献立ビーフシチューなんだ。おばあちゃんの手伝いしなきゃ」

手早く帰り支度をする蒲公英。

「なぁんだ。ウチに寄ってもらって、赤い飲み物でも御馳走しようかと思ってたのに」

「…それって血じゃないよね…」

ちょっと顔を強張らせる蒲公英。

「勿論紅茶だよ。ぽぽちゃんに吸血なんて勧めないって」

ルナはクスクス笑う。

が、今日は残念ながらキャンセルだ。

「ごめんね、ルナっち」

「気にしないで。また今度ね」

ルナに手を振って、蒲公英は教室を出て行った。