「うぇええぇえっ?」

すずに指名されて、ゲッと顔を顰めるティーダ。

ミルトゥワから天神に来て数ヵ月が経つが、いまだに英語は苦手だ。

何で1つの世界に、幾つもの言語が存在するんだ、この惑星は。

ミルトゥワなんて、便利な翻訳の道具があるから喋れなくても平気な親切な世界なのに!

「うーんと、えーと…」

席を立ったものの、眉根を寄せて難しい顔をするティーダ。

まず筆記体が読めん。

何だ、あの最初から最後まで繋がった文字は。

困惑頻りのティーダの背中を。

「お?」

後ろの席の蒲公英が突っつく。

掌を見せる彼女。

そこにはセンテンスの和訳が。

しかし。

「んんん?字がちっさくて見えん」

ティーダは蒲公英の手を握り、グイッと引き寄せる。

「わわっ、ティーダっち!」

引き寄せられ、今度は蒲公英が困惑する。

「み、みんな見てるよ!恥ずかしいよっ、放してっ」

「いや、よく見えん…」

蒲公英の手を凝視する天然勇者。

教室内は、ヒューヒューと冷やかしの声が上がる。

「カンニングをそんな堂々とされると困るの」

すずは苦笑いした。