「こりゃ歴然だな。見ろよ蒲公英、龍一郎のあのキレッキレの動き」

一緒に駆けつけたティーダと蒲公英が、戦いの行方を見守る。

彼はそう言うが。

(全然遅ぇよ、こんなの…)

龍一郎は思わず舌打ちが出そうだった。

彼の記憶は、遥か未来の自身の実力を知っている。

修行に修行を重ね、幾多の修羅場を潜り抜け、父であるノエルや祖父の拓斗に匹敵するか、凌駕するほどの実力を身に付けた、未来の龍一郎。

それに比べ、まだ未熟だったこの時代の龍一郎の、何と遅い事か。

蛮のこの程度の攻撃ならば、回避して既に背後を取れていなければならないというのに。

(俺は…こんなに弱かったのかよっ!)

苛立ち紛れに、突き上げと膝蹴りを同時に繰り出す!

心意六合拳の一手、迎門鉄臂(げいもんてっぴ)。

突き上げは確かにヒットしたものの。

「ちっ!」

膝蹴りは打点をずらされてしまった。