「このっ!」

手にした十字架を投擲する蛮。

鋭く回転しながら、十字架は飛翔する。

風切り音に、普通の者なら恐れを為すだろう。

だが。

「見た目ほど脅威ではない…動きも単調だし、スピードも吸血鬼の動体視力なら見切れる…」

軽々躱すルナ。

「くっ!」

ブーメランのように戻ってきた十字架を、蛮は受け止める。

「やめときなさい…」

ルナは小さく溜息をついた。

「やった所で貴方が怪我するだけ…また血を吸われて貧血になりたくないでしょう…?」

「うるさい!」

やや涙目で、蛮は十字架を振り上げた!

「男としても認められず、実力も認められず、このまま引き下がれない!」

その振り上げた十字架を。

「!?」

後ろから龍一郎が摑んで止めた。

「ルナの言う通りだ、やめときな」