ドアを開けると、廊下があって、少し歩くと階段。

「…階段?」

ボンヤリした頭で、少し思案する。

昨夜、2階の部屋で寝たっけ?

確か、すずと一緒の布団で寝たと思ったんだが。

すずや娘のベルに、俺を運ぶほどの腕力があるか?

…あるかもな、2人とも悪魔の血を引いてるし。

思いながら、階段を下りる。

とにかく、階下から漂ってくる味噌汁の香りが堪らなく誘惑してきた。

龍一郎は、朝は白米党だ。

白いご飯に味噌汁、焼き魚、それに納豆に漬物なんて最高じゃね?

言わなくても準備してくれる辺り、流石俺の嫁は天下一だな。

そんな事を思いながら。

「はよーっす、朝飯出来てるか?すず」

呼びかけた先に立っていたのは。

「は?」

鍋の中身に味噌を溶かしている、橘 蒲公英(たちばな たんぽぽ)だった。