「あったかいなぁ……」
背中越しに感じる彼の体温は
あたしの心拍数を徐々に上げていく。
慶さんもあたしと同じ気持ちだったらいいのに。
そしたら、恋人同士がするような幸せ日々を送れるのかな?
…この寂しさを彼が優しいぬくもりで埋めてくれてる。
きっと、あたしはもうこの人以外を好きになれない。
ずっと、一緒にいたい。
そう思える人に出会えるなんて少し前までのあたしは思ってもいなかった。
「慶さん…好きだよ、大好き」
寝ているから呟いても聞こえないよね。
いつか、直接言える日が来たらいいな…
そんなことを思いながらあたしは目を閉じた。
夢を見た。
お姉ちゃんが両親と笑い合っている姿があって、あたしは遠いところからその姿を眺めていた。
まるで…今のあたしのようだ。
こんな夢なんて見たくない。なのになかなか覚めてくれない。
「どうすっかな…」
ふと耳元で慶さんの声が聞こえた気がした。
いくら慶さんが好きだからって、所詮これは夢でしかない。
知れば知るほど好きになってゆく彼を想うこの気持ちだけはなくならないで。