「……沙耶はお前に触れられることで、自分の存在を認めてきた。愛しているとお互いに気づいた今、お前はなんで、今更、沙耶に触れることを躊躇うんだ?」


甲斐は人の目がないことを良いことにタメ口となり、俺に質問攻撃する。


「“儀式”か?“儀式”のせいか?そんなことで、お前は沙耶に触れるのを躊躇って……」


「ちげぇよ……」


そりゃ、確かに“儀式”のときもあった。


だが、今は。


“今”は、違う。


「……まさか、自分の過去を呪うときが来るとはな……どうして、俺は、数多の女と関係を持ったんだろう?」


俺は頭を抱え、何度目かわからない、ため息をつく。


「は?そりゃ、お前……単純なる、性欲処理。または、女不足のせいじゃねぇの?」


そして、俺の真面目なる悩みを、超絶的に最低な理由で片付けるこいつは、本当に俺の秘書で、友達なんだろうか?


たまに、本気で疑う。


「そうかもしれないけどよ……」


「いや、逆に、何があり得るんだよ?お前、和子さんのせいで、女嫌いが常に最高潮だったろ?そんなお前に性欲処理以外に女に触れた理由があるわけ?」


ここまで、鬼畜な野郎はいない。


断言できる。…………本気で。