(……つか、ここに私の元の家なんて余裕で入るし。なんで、庭に車が入れるの?)
金持ちとは、本当に怖いものである。
「お待ちしておりました」
車を降り、迎えてくれたのは、沙耶付きの世話係である蝶佳(ちょうか)さん。
沙耶に好意的であり、沙耶もまた、便りにしている相手。
「沙耶さまから、お話はうかがっております。悠哉さまと茅耶さまのご準備もできておりますが……」
「ありがとうございます。ところで……沙耶は?」
「昼頃、飛び出していかれて……そのまま」
「……それって、何時ごろですか?」
「13時頃だと思いますわ」
「2時間前か……」
現在、午後、15時である。
「あの二人、本当に、よく喧嘩をしますよね~」
「フフっ、喧嘩するほどなんとやらですわ」
「ああ。そういうやつですか~」
蝶佳さんはふんわりとした人で、物事を深く捉えない。
だからこそ、沙耶たち夫婦の喧嘩もさらりと流すことが出来るのだが……