それほどまでに溺愛している妻を悪く言う人間がいたら、そりゃ、男にとって、その相手は“敵”と化す。


(……逆に、自分が悪く言われていることについて知っていながら、放置できる沙耶さまの心の強さもどうかと思うが……相馬さまが相手を消していないのも、また、奇跡的なことである)


けど、それほどまでに心が強くないと、もう、御園という家では、誰も生きていけないのであろう。


「……沙耶さま、相馬さまを信じてください」


そんな闇の家で、彼らの導は愛するものだけ。


愛し続けるその心が、彼らの心を強くしている。


「苦しいのなら、いつでも、帰りましょうね」


振り返ることはせず、そう言えば。


「……っ、ぅ……」


声を殺した、主の泣き声が聞こえた。


俺は聞こえない振りをして。


運転に集中した。