ケータイ小説 野いちご

【完】こちら王宮学園ロイヤル部




見て分かる通り、重度のブラコン。

一部ではいつみ先輩のそばにいたいから王学の理事長秘書になった、とまで言われるほど。さすがにそれは嘘だと思うけど。



彼氏ができてもブラコンが重度すぎて別れた回数、数知れず。

その度に「彼氏と別れたの」っていつみ先輩に泣きつくから、本末転倒な気がしてならない。



そしていつみ先輩は、いくみさんのことをとても嫌がっているけれど。

本気で嫌がっているわけじゃないとわかっているから、いくみさんも弟が可愛くて仕方ないらしい。



「あ、そうだ夕帆」



「ん? なに、いくみ姉」



「週末にでも一緒に買い物行こう?

新しい化粧品……あ、そろそろもどらなきゃ怒られるわ。ごめんね、またあとで連絡する」



腕時計にちらりと視線を落とした彼女は、本当に急いでいるのか足早に部屋を出ていった。

時間ねえなら抱きつくんじゃねえよ、といつみ先輩がボヤくけど、彼女がつけている腕時計はいつみ先輩が誕生日にプレゼントしたものだ。




自分の姉の誕生日に腕時計をプレゼントしていながら、「嫌い」はさすがに無理があると思う。

いや、嫌いじゃないって知ってますけどね。



「……なに?椛。

その生暖かい視線をあたしに向けてくるのは」



「いや〜?

相変わらず夕さんは、いくみさんと仲良いなって思っただけだよ〜」



「……幼なじみだからよ」



そっけなく言って、話を終わらせる夕さん。

いつみ先輩がソファに座り、キシリとスプリングの軋んだ音が静かな部屋に落ちた。



「……そろそろ仕事するか」



全員に言ったのか、それとも独り言だったのか。わからないけれど彼の言葉で、全員が各々動き出す。

それを見ながら、ここに姫川先輩が加わればどうなるんだろうか、と。──歪な時間の先に、薄らと期待が見えたような気がした。




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