その記事を見下ろしながら俺はニヤニヤ笑う。

いや〜毎回思うけど、この記事を書いてくれる新聞記者は良い写真を使ってくれるものだ。

毎回かっこよく写ってて俺としてはこの記事は大満足だ。

「それで持ち主にはちゃんと返したんだよね?」
 
ミリィの言葉で我に返った俺は軽く咳払いをしページを一枚めくって言う。

「当たり前だろ。それが依頼主との約束だったからな」
 
今回の依頼は【双玉のサファイアを返してほしい】と言う内容だ。
 
どうやらその双玉のサファイアは、俺に依頼をしてきた御婦人の妹さんの持ち物だったらしい。

しかし妹さんは早くに病死してしまい、御婦人は【妹の大切な遺品】として盗まれないように厳重に保管していたそうだ。
 
だが双玉のサファイアは何者かによって盗み出されてしまい、御婦人がその事に気がついたのは随分後の事だった。

探し出そうにも情報が何一つなく、困っていたところである人を介して俺に依頼してきた。
 
もちろん俺が怪盗レッドアイだという事は、他言無用として依頼を引き受ける為の条件の中に入っている。

だからこうして未だに俺が怪盗レッドアイだとバレていないわけなんだが……。
 
正直、今回の依頼は引き受けるかどうかギリギリのところまで悩んだ。

情報が一切ない宝石を盗み出して欲しいだなんて無理に等しかったからだ。
 
でも俺は御婦人の依頼を引き受けた。
 
それはもちろんここで断ったらその腹いせに、俺が怪盗レッドアイだって魔法警察に告げ口しかねないからだ。
 
魔法を使えば記憶操作なんて簡単に出来るのだが、出来ればそんなことしたくないし、バレたらミリィに何を言われるか……。

そこでミリィの怒った顔が浮かび俺は息を飲んだ。

しかし結果は新聞の表記事に載っている通りだ。

「また何か依頼とか来てるの?」

「今のところ来てないな。しばらくは探偵業の方に専念出来そうだ」
 
そう思って新聞を元の場所に戻した時だった。

「それは平和で何より」
 
ミリィのそんな言葉が聞こえ俺はムッとした顔を浮かべる。

「おい、それはどういう意味だ?」

「別に?」
 
ミリィは何もなかったように紅茶を一口飲んだ後、カップを持って奥の部屋へと消えた。

「ほんとに可愛くない幼馴染だ」
 
ボソッとそんなことを呟き、カップの中に残っていた紅茶を一気飲みし、空になったカップを勢い良く机の上に置いた。