いったいどれだけの時が過ぎたのだろうか? 自分は今どの辺りに居るのだろうか? まったく検討もつかない。

「はあ……」
 
俺は軽く息を吐く。周りの気温が低いせいか息は白く見える。
 
被っていたマントのフードを下ろし後ろを振り返る。
 
後ろには草原が広がっていて、冷たい風が俺の髪をなびかせながら吹き抜けていく。

「少し……寒いか」
 
朝日が昇り始めると徐々に草原を照らしていく。俺は昇ってくる太陽を見つめた。
 
太陽の朝日が首から下げていた翡翠色の宝石を照らした。それを見た俺は宝石を優し掴む。

「また……【今日】が始まるのか……」
 
いったい何日目の朝だ? いつもながらそう思う。もう日を数えるのすら嫌に感じるところだ。
 
フードを被り直した俺は前を向き、ずっと先まで続いている草原を歩き始める。
 
行く宛なんかない。ただひたすら歩き続けるだけの旅路だ。
 
だが……俺にはやらなければならない事がある。

「オフィーリア……」
 
もう一度、翡翠の宝石を掴みその名を呟いた。
 
あの日の出来事は昨日の事のように感じる。最近は夢にまで見る始末だ。
 
そう――あの日の出来事は俺の人生を大きく変えた瞬間だった。