『……かっこいい……』


アホみたいに目をキラキラさせていた。俺と、名前も知らねえ女がキス(それも結構濃厚なやつ)するのを見ていたくせに、俺の顔を見るなり。

ま、女なんてそんなもんか。

そう思った矢先、奴は顔を真っ赤にさせて俺の元から走り去った。そう、この俺様から。


______朝日林檎。


俺も知ったのはこれよりちょっと後になるが、同じクラスで隣の席の女のコ。あの真っ赤な顔を見ればわかる。あいつはぜってえ処女だな。


つうか俺から逃げるとかマジ何様?


……言い訳じゃないけど、俺は別にやりたくてああいうことをやってるわけじゃない。今日だって本当はちゃんと入学式に出るつもりだった。

だけど、俺に絡んでくる女どもはあまりにもうるさい。


『知ってるよお、郁也くんカッコいいって中学でも有名だったもん。頼めば誰でも抱いてくれるんでしょお?』


そう話しかけてきたのは美人な先輩だった。

入学初日だっつーのになんなんだその噂は。ふざけんのも大概にしろ。

ちょっと遊んで捨ててやるつもりだったのに、あの朝日林檎という奴のせいで計画は失敗。

……だって、馬鹿らしくなったから。こんな自分と、さっきまでキスしてた先輩に。