リルはありとあらゆる店を巡った。八百屋、魚屋、肉屋、花屋、本屋、雑貨屋、装飾品店、飲食店。けれどいきなり王都にやってきて突然働かせてくれと頭を下げるリルを、どの店も怪しんで受け入れることはしなかった。


「困ったな…」

リルは道にしゃがみこんだ。

働かせてくれる場所を探しているうちに、すっかり陽は傾いて夕方になってしまった。


視線を下げていると、石畳にぽつりと水玉模様が描かれ始めた。

慌てて顔をあげると、ぽつり、ぽつりと雨が降ってきた。

ぽつり、ぽつりと降り出した雨が次第に激しくなっていく。傘を取り出そうと慌てて鞄の中を探すが見当たらない。


「傘まで盗られたの!?」

リルはあの男たちに悲しみを通り越して怒りさえ覚えていた。けれど雨宿りをどうにかしなければならない。

慌てて近くの店の軒先に避難するが、店主から訝しい視線を向けられてしまい、リルはあえなく他の場所を探すしかなかった。

そうは言っても見知らぬ街、どこに何があるかなど分からないリルは彷徨うことしかできなかった。