「光希くんいますか?」




1つ下の学年の教室。


私は調理実習で作ったマフィンを手に光希くんの教室へきた。





「またアンタ?」



光希くんは、私を見て溜め息をついた。


ショックなど受けません。


こんなの想定内です。





「何の用ですか?」



「授業で作ったんだけどよかったら」



私の差し出したマフィンに周りが、あ~と言う。

まるで、残念だったな、とでも言うように。





「俺、甘いの無理なんです」



それで周りはこの反応か。

でもそれも想定内。




「大丈夫、これ甘くないから!」



「は?」




光希くんは驚いた顔してる。


そんなの調査済みです。

ストーカーではありません。







「……一個だけ」


光希くんは相当迷った挙句、2つ入りのマフィンを1つだけ食べた。

1つ余るのもあれだから、私も一緒に食べた。





何口かで食べちゃった光希くんは、




「……うまかった、」




って言った。








キミに好きになってもらう方法 【その4】は、




家庭的な女の子であることだ。







満足そうな私に、彼は手を伸ばして、






「ついてる、」


と私の頬についた粕をそのまま口に運んだ。








「……っ!」




これは、想定外だ。