一目見たときから、ずっと。

その学校とは思えないほどの設備に、おどろいた。──"王宮学園"。



私立で、学費だってシャレにならないけれど。

全国から生徒が集う進学校。ラボと呼ばれる巨大な実験棟、アスリート育成のためにつくられた最高峰のジムナジウムは、専属トレーナー付き。



集会に使用されるドームは、日頃芸能科の生徒たちがステージパフォーマンスの技を磨く。

まさに、並外れたエリートばかりを育成するための学校。



入試の倍率だって桁違いで、試験内容も学科ごとに大幅に異なる。

そんな、入るだけでも大変な王宮学園が。



「しばらく、転校生のあなたに対する好奇の目は耐えないかもしれないけど……

人間、飽きたら早いものだから」



「……はい」



転校生を受け入れを認可したのは、わたしが初なんだという。

なんでも、"条件を満たしているから"らしい。──つまりは、特例。




どこぞの城だと言いたくなるほど広い廊下を、理事長の秘書さんらしい女性と歩く。

まだ若くてパンツスーツの似合う、バリバリ働くキャリアウーマンって感じの美人さんだ。



「ああ、そうだ、姫ちゃん。

ご両親から、入寮の許可もいただいてるの。だからもし寮に入りたくなったら、いつでもあたしに声をかけてちょうだい」



こっちで色々と手配するから、と微笑んでくれる彼女に「ありがとうございます」と答える。

この学校は全国から生徒が集まるため、学生寮も当然ながらこの広い敷地内に存在するのだけれど。



わたしの家はここから徒歩で15分という近い距離にあるし、寮については断っていた。

それでも両親から許可が出ている、ということは、たぶん……



「さて、姫ちゃんの教室はここよ」



──ハッ、と。

彼女の声に意識を引き戻されて、顔を上げる。



廊下に立ち並ぶ教室には窓がなくて、中の様子がまったく見えないせいで、教室と言われても実感がない。

唯一ドア上に取り付けられていた『普通科2-1』というプレートだけが、教室らしさを醸し出していた。