「始。わかる?」

「そりゃあ、難しい顔してため息ついてりゃね」

わざと眉間にしわをよせたまま私が尋ねると、坂井始は軽く肩をすくめて私の前の席に座った。

「そんで、今度はどこの誰なの」

「近くのコンビニの店員さん。顔がすごくタイプなの」

そうして私は、嘘の片想いを始に語るのだ。

私の本当の好きな人は、目の前に座る始なのに。

片想いし始めてかれこれもう1年。

そんな始相手に存在しないイケメンコンビニ店員の話をしているのには、全然深くない訳がある。

「お前さ、高望みはいい加減にして、傍にいる男にしとけば?」

架空のコンビニ店員の話を一通り語り終えると、始が頬杖をつきながらこちらを見た。

聞いて驚け、私が好きなのはキミだよ始クン。傍にいるも何も今目の前にいらっしゃいますが何か?