試合は8対1で俺らのチームが勝った。
試合終了後、俺の手にはホームランボールが戻ってきていた。
「絢人!お前、すげーな!!」
一成を探していると一成が俺の首に腕を回してきた。
「うん。どうしても渡したい人がいたから。」
「へぇー誰なの?絢人、初めてホームラン打ったもんな。やっぱお母さんにわたすんだろう?」
「ううん違うよ。」
俺の渡す人はもう、決まってる。
「これは一成にだよ。」
「‥‥え?‥俺?な‥なんで、俺なの?普通、お母さんにあげないの?」
一成は動揺していた。
「お母さんには、次の試合にでも渡すよ。俺たちは甲子園に行くチームだから、チャンスはいくらでもある。でも、一成の誕生日は今日だけだから。」
「まさか‥今日、全部フルスイングしてたのは俺にホームランボールを渡すため?」
「うん。一成には助けられてばかりだから恩返しがしたかったんだ。だから、これは受け取ってほしい。俺からの気持ちのこもったホームラン。こんなの世界で1つしかないよ。」
俺は一成の手にホームランボールを握らせた。
すると‥ホームランボールに水滴が‥
雨かと思って空を見上げたが空はからりと晴れている。
見るとそれは一成の涙だった。
「すげー、‥嬉しい‥。こんなに嬉しい誕生日、初めてだ‥。ありがとう‥ありがとうな絢人。絶対にこのホームランボールは大事にする。オークションにも出さないから。」
「お前、売る気だったのかよ。」
俺は笑う。
そして、俺は大事な親友に笑顔で伝える。
「一成、誕生日おめでとう。お前に出会えてよかったよ。一緒に甲子園、行こうな!」
俺らの熱い夏はまだ終わらない。