「愛ちゃん…。


今、完全に受け止めきることは難しいと思う。


無理に、受け止めなくてもいい。


でもね、愛ちゃん。



俺が約束する。」







「え?」







「愛ちゃんの病気、俺が治してみせる。」






私は、先生の言葉に涙が溢れていた。





これが、本当の気持ちなのかもしれない。





ずっと、私は自分を人間として受け止めていなかった。





自分は、製造されて作られたような者だったから…。





でも、今日でわかった気がする。





本当は、ずっと誰かに私を人として、1人の人間として認めてほしかったのかもしれない。





だけど、それは希に悪いと思って無理矢理心の中に押し殺してきた。






私にも人としての気持ちが、まだ心の中に眠っていたんだ。





止めどなく溢れ出す涙を、先生は何も言わず、優しく大切な物を包み込むように抱きしめてくれた。






私は、初めて感じた。




人の温もりって、こんなに優しくて温かいものだったの?





こんなに安心できて、苦しいものなの?




冷えきった心を温めていくように、先生の温もりは私の心までも温かくしてくれた。






「愛ちゃん…。」






「私、ずっと1人だった。


私は、肝臓に腫瘍を患った姉の希のために産まれてきたようなものなの。



でも、お母さんは高齢で希を産んだから2人目は作れるような身体じゃなかった。



だけど、希とお母さんは血液型も一緒だった。



血液型は一緒なんだけど、希は日本人には珍しいAB型のRH-だったの。



だから、お母さんの卵子と精子バンクに登録された精子を体外受精されて、私は誰かの仮腹として、違う人のお腹の中で育てられて産まれてきた…。



赤ちゃんだった私に、メスは入れられないからって私が成長するのを待ったの。



希、病気で体が小さかったから私がな6歳くらいにれば肝臓も成長するだろうって話があったみたい。




私が6歳になった時姉は9歳だった。




その時、肝臓の移植手術をしようってなって色んな検査をされたの。




肝臓の移植が終われば、私は死亡確認をされるか、親の希望しだいで私への健康な肝移植を待つかどっちかだったの。




親は、私に死を選んだ。




だけど、色んな検査で血液型が同じでも、私の肝臓は小さくて姉には合わない。



医者から、そう言われたらしいの。




もし、私が肝臓をあげていたら、私の命は6歳で終わりだった。





でも、その医者はそんなことをさせられなかったらしいの。




命は誰にでも平等にある。




その医者はそう言ってた。




その医者は、母親に嘘を着いた。




本当は型も大きさも同じで、移植には合うはずだったの。




希には、脳死判定を受けた人の肝臓を移植するって言ってた。



けど、見つかる前に希は亡くなった。



私の肝臓をあげていれば、私がもう少し強かったら…。




私は、望まれて産まれてきたけど、希のために産まれてきたようなものなのに。




ずっと、希が亡くなってからその繰り返しだったの。」