「パンッ」

乾いた音が広い室内に鳴り響いた。

硝煙の匂いが鼻腔にまで届いてきて

思わず顔をしかめる。

今まで拳銃を触ったことも無く、

映画などでしか見たことがなかったため実物を見るのは初めてだった。

本来ならば、実物と肯定する前に真っ先に

オモチャだと疑うが、目の前にある死体と

手にずっしりとくる重さがオモチャでは無いこと

を実感させてくれる。

死体の胸元からは生温かい鮮血が

溢れ出している。

ふと、自分の制服に視線を移すと

制服には夥しい量の血が付いており

まるで、元から赤い制服だったかのように

思わせる。

染み込み、乾ききっている血もあれば

まだ付いたばかりであろう、真っ赤な血もある

真っ赤な血にそっと触れてみるとネチョっと

不快な音をたて指先を赤く染める。

その血の温かさで我に返った私は

拳銃を払いのけるように地面に投げつけ、

崩れ落ちるように座り込んだ。

恐怖からか、孤独感からか、罪悪感からか

目からは止めどなく涙が溢れ、

付着した血を 人を殺めてしまった罪悪感を

洗い流してくれるかのように零れ落ちていった。

それでも罪悪感が消え去ることはない。

まだ手には拳銃を持った時の重さが残っており、小刻みに震えている、

今すぐにでも手を引きちぎりたい気分だ。

自分の左手の上に右手を添え、強く握りこみ、震えを止めようとする。

それでも止まらず、おもむろに落ちている拳銃を拾い

銃口を自分の胸元に当てた。

怖い、死ぬのは怖い。

自分で死ぬことが怖いなら、他人に殺されることはもっと怖いだろう。

怖い気持ちとは裏腹に手は引き金を引こうとしている。

目をギュッと閉じ、ここに来てからのことを思い出していく。

この時、まだ気づいていなかった。

背後から近づく1つの陰に。