あれから、数十年が経過した。

中央大陸に存在する、皇都。

気候は温暖で雪が降る事はないが、雨の少ない乾燥地帯だ。

その皇都から離れた、荒野。

疾風砂塵吹き荒ぶ大地を、1人の旅人が歩いていた。

この地帯を旅するのならば必須の砂除けの外套で、口元まで覆っている。

強風にはためく外套の隙間から見え隠れするのは、袖のない白い衣服。

黒い帯で括っている。

動きやすい軽装、腰の帯に帯剣していない事から、騎士や剣士の類でない事は見て取れる。

しかし、商人にしては不相応なほどの張り詰めた胸筋、太く引き締まった二の腕。

明らかに平民ではなかった。

何より風変わりなのは、左右の拳と足首から下に、厚手の包帯のようなものを巻いている事だ。

『バンテージ』

地球ではそう呼ぶのだそうだ。