僕は、坂下先生に対して『気味悪い』って言ったマセガキのことを思い出した。



「さっきのガ…いや、生徒は誤解したんじゃないんですかね?」



「…でしょうね。」



「迷惑でなければ、探し出してフォローします。」



「ありがたい話ですが、1学年8クラスもある学校…探し出すには、大変苦労するかと思われます。」



「大丈夫!

『ワカナ』って名前の、手掛かりがあります。」



僕がそう言うと、坂下先生はタバコの火を揉み消しながら口を開く。



「こんな日に学校に来るのは、新入生と式典の手伝いをしている2年生くらいでしょうね。」



あ、そっか!



入学式だから、大抵の上級生は学校休みなんだ…。



「さすが坂下先生、良いヒント頂きました。」



僕のセリフに、坂下先生が目を見開く。



「まさかと思いますが…、全学年の中から探す気でいたのですか?」



「もちろん。」



坂下先生は、思いっきり息を吐き出し、呟いた。



「先程賜った教頭先生からのお褒めの言葉、返して頂きたいものです。」



坂下先生、ヒドいな…。