「ああっ!モヤモヤするっ!」
私は家に帰り楽しみにしていた漫画も集中できない有様だった。主人公が男の人と手を繋いで踊るところを見てると余計に。

「んー…。何かで気晴らししないと…。」

ブーッブーッ

スマホが鳴り響く。
「ん?Rainかな?」
私は充電していたスマホを取り上げて見る。

ー乙葉ー

光ちゃんやっほー!
私、明日暇なんだけど。会えないかな?

ーやった!

私はそう思うと送り返すことにした。

「い、い、よ!私も、会いたい、な。っと!」

乙葉ちゃんから可愛いスタンプが送られてきたので私も返す。ちょうど気分転換に何処かにいこうと思ってたからちょうどいい。

「乙葉ちゃんと遊ぶの久しぶりだなー!」
私と乙葉ちゃん、羽島乙葉は小学生の時からの親友だ。朔とも知り合いだが乙葉ちゃんにとって朔は弟のように思うらしく、好き嫌いをしてる時無理やり口に突っ込んでいた。

ーあの後、朔ってば苦い顔して固まってたな

私はクスリと笑う。
「光ー!ご飯よー!」
「はーい。」
私はスマホをベットに投げて一階に降りた。






こんなもんかな!
私は鏡の前でポーズをとる。新しい服買っておいてよかった!私はそう思いながら家を出る。
今日は土曜日!乙葉ちゃんと遊ぶ日だ!私はスキップしそうな気持ちを抑える。電車に乗ってショッピングモールに行く予定だ。そこで待ち合わせをしている。
「…今回こそ話そうかな。…でもなぁ。」
私はため息をついて歩をはやめた。




「でね!そのシュートとか決めるところがかっこいいんだよ!ダンクは無理なんだけどっ。」
「すごいね!そんな遠くから!さすがバスケ部!」
私と乙葉はかっこいいとは何か。という恋愛話をしていた。

「…それでそっちは?何か進展なかったの?」
「えっと…。実はね…。」
私は一昨日来た青年、司馬君について話した。
「すごいじゃない!そこでパン食べてたらもう少女漫画よ!」
「いや、そこじゃないでしょ」
「お祖母さんが外国人っていうのでもポイントは高いわ!その上顔良し性格良し!まさに理想ね。さらにさらに!光と仲良し!もう素晴らしいわ!」
興奮する乙葉ちゃんをよそに私はオレンジジュースを飲んだ。

「で、どうなの!?」
「えっ?何が?」
「どう思ってるの!?」
私はついオレンジジュースを吹きかけた。おそらく、いや、確実にこの目は恋愛についてだ。
「え、いや。でも、会ったばっかだし、いきなりそんなこと…!」
「時間は関係ないものよ?その様子だと気になってはいますって言ってるものよ?…まあ、もう少し待ってあげるね。」
彼女もジュースを飲み始める。
気になってる。確かにそうだった。百瀬さんとくっついてた時もモヤモヤしたし。けれどそれが好きだとは決めつけることができなかった。

「別にそんな人なら惚れちゃってもいいと思うけどな。」
彼女はそういうも私にとってすきは軽いものではなかった。

ーそう考えるのがいけないのかな。

過去に男の子を好きになったことはある。友達の好きな人だ。友達は身を引いたけど今思えばその感情は思い込みに近かった。友達をその人にとられた気がしていらいらした。そんな感じだった。

ーそれに、蒼さんがいるし。

私にとって蒼さんは特別だ。とても特別な感情だ。彼を考えると胸があたたかくなる。

「他に気になる人がいるとか!」
「うぇっ!?」
私は慌ててしまった。乙葉ちゃんはそれを見てニヤリと笑う。
「ほうほう。いるとな?話しなさいな。」
乙葉ちゃんの顔が迫ってくる。
「えっ、あの…!」
私は決心した。昔一度あの夢について語ったことがある。しかし、彼女はそれを夢と思い込み、あまり興味を示してはくれなかった。
「あの、夢に出てくる、蒼さんっていう人なんだけどね。」
乙葉ちゃんは私の顔を見ながら頷いた。
「…つまり、理想のタイプとは転入生君は違ったっていうことね」
「そ、そういう訳じゃなくて…!」
「まあ、理想と現実は違うものよ?」

ー今日はもう話せそうにない…!

私は諦めて別の話に移すことにした。それに伴い人が混みだしたので店を出る。

私達は服を見たり小物を見たりした。
「それでさー…」
ふと彼女は顔を上げると目を見開いた。
「やばっ!ごめん!今日この後塾の補習があるの!」
「そうなの?頑張ってね!」
なるほど。もしかして今日呼び出したのはその補習を耐えるためか。
彼女の塾はかなりスパルタらしく、授業終了後には生徒全員ミイラになっているらしい。そのための息抜きだろう。
私は彼女の背中を見た後、まえを向いた。

ー私も息抜きになったし。…もう少しだけ見て帰ろうかな?

私は散歩をすることにした。土曜日だからか人は結構いた。

ーあれ?今の…。

ふりかえるとそこには朔がいた。

ー珍しい。朔が買い物なんて。

朔は基本物欲がない。人から貰ったものは大切にするいい人だが、あまりにも統一感がない。

ー私が昔あげたビー玉が机の上にあった時は驚いたな。

綺麗な色だからとあげたのだ。朔はそのビー玉を見てとても嬉しそうにしていた。

ー話しかけてみようかな?

私は近づこうとしたがやめることにした。朔が自ら買い物をしてるんだ。それを無下にしたくはなかった。

ー朔に対しての気持ちってなんか蒼さんのとかと違うな…。もしかしてこれはあれかしら!

私は頭の中で子供がお使いをしている姿を思い出していた。私は同調しているのだろう。彼らの母親に。口から声が漏れそうになる。

「ねえ。あの人、かっこよくない?声かけてみない?」
「そうしたいけどー。なんかできないよー。だって、あの顔!そこいらの女と釣り合わないよっ!そんなの無謀よ!他あたろ?」
二人の女の子がそう喋っているのが聞こえた。

ー確かに。朔は立ってるだけで絵になる。

脚は細いし長い。モデルのように華がある。

ーそれに比べて私は…。

脚はお世辞にも細いとはいえない。その上プロポーションもいいとはいえない。顔も童顔。

ー劣等感感じるな。

私は気づかれないようにその場を立ち去った。



ほどなくして私は本屋にきた。
「やっぱいつきてもいいな!本屋は!」
私は必ず何処かに出かけるときは本屋に行くことにしている。ここの本屋は広いし書も充実している。私は早速歴史の本の所に行こうとする。

ーあれ?あそこにいるのって…

私がみた先には柚木君が本をまじまじと見つめていた。私は彼の背中をつついてみた。

「柚木君?」
「えっ!?」
彼は驚いた顔で私をみた。私はその顔を見てわらってしまった。
「ごめん。驚かせる気はなさったんだよ?ただ、何読んでるのかなって…。」
「あっ、これ?見る?」
彼はそう言って私にみせてくる。そこにはカタカナがたくさんあるのと同時に何かの図まであった。
「えっ。っと…」
「分子論の本だよ。分子の分解に関しての話。っていっても想像であって、まだ証明はされてないんだけどね。」
私は彼の説明を聞いてなんとか理解した。
「もしかして、将来の夢のため?」
「そうなんだけどね。…でも、英語とか頑張らないとだし。道は遠いかな。」
彼は下を向いてしまった。私はそんな彼を見て口を開いた。
「そんなことないよ!こんな難しい内容がわかるんだから!柚木君ならできるよ!」
柚木君は私をみて、びっくりしていたようだ。そして彼は、
「ありがとっ!」
とても嬉しそうな表情をして笑った。私はその顔を見て顔が赤くなるのをかんじた。柚木君とは最近までこのようなプライベートな話をしたことがない。彼を見かけたときは大体彼は友達と喋っているか、寝ているときだ。歴研でも彼は幽霊部員だし、話せても作業の資料についての相談だ。話す機会もなかった。

ー柚木君、笑うとこんなに素敵なんだな。

私は彼の笑顔につられて笑った。









ーー朔sideーー

欲しいものが買えた。

僕は今日は大掛かりな検査のために市内に出ていた。

やっぱり若者向けじゃないとなかなかないな。

僕の町はそれこそ家族世帯が楽しめるようにしてあるので幅は広いがそこが浅いかんじだ。

本屋にでもいってみようかな…ん?

そこには彼女ー、僕の幼なじみの光と柚木がいた。なにやら楽しそうに話をしている。

ー二人ってあんな仲だったっけ?

少なくとも歴研での会話はしたことがあっただろう。しかし、彼女と彼は他に共通点がない。

ー僕が無理やりー、いや、お願いして入ってもらったとはいえ、つい最近まで話してはいなかった。

原因といえばあの夢ノートだろう。

ー僕も存在は知らなかったが。

それでも距離が縮まったことに変わりはなく僕は柱に隠れて見つめる。胸の中に嫌な感情が浮かぶ。

ー早く帰ろう。こんな人だらけのところにいたら気分が悪くなる。

そう思って僕はこの場を去ることにした。