教頭と別れ、喫煙所に入った坂下先生を追いかけた。



「坂下先生は、転勤してきたあの教頭と親しそうでしたけど…。」



「教頭先生は、大学の先輩です。」



坂下先生は、タバコを取り出しながら言った。



「うわー、外で僕が言ったこと本人には黙ってて下さいよ。」



「神経質そう…ということですか?

言いはしませんが、心配ならば『口は災いの元』だと、肝に銘じておきなさい。」



坂下先生はそう言うとタバコに火を点け、一服してから僕を見た。



「蒼先生は、タバコを吸わないでしょう?

何故、此処にいらしたのですか?」



僕は、坂下先生に言わなければならないことがある。



だけど、なかなか言い出せずに…いた。



「ロリコン変態オヤジ。」



坂下先生が紫煙を眺めながら、ぼそっと呟く。



この人には、僕の考えていたことがお見通しなんだろうか。



「申し訳ありません!」



僕は、頭を下げた。



「構いません。

この1年、娘がいた話をしたことはありませんでしたから…。」



そう言うと、坂下先生はタバコの煙を吐き出した。