「夏樹君、ありがとう」

私は改めて、今までの感謝の言葉を口にした。

今までずっとひとりで戦ってきた。
ううん、戦うことさえ次第に疲れ果てて、やめてしまっていた。

でも、君が現れた。
桜の花びらとともに、君は私に笑顔を、友達を、居場所をくれた。

君がいてくれたから、私は孤独じゃなかった。

欲しいけど、手に入らないモノ。
手に入らないから、望むことをやめたモノ。

君は、私のあきらめたモノを取り戻してくれた。

「っ……俺の方こそ、ありがとな」

また強く、その胸に引き寄せられる。
雨の匂いの中に、ほのかに香る陽だまりの香り。

抱きしめられて、実感する。
体は強張らないし、普通に話せた、もう夏樹君の前でなら、ありのままの私でいられるんだってこと。

夏樹君はこの雨と一緒に、奇跡を連れてきてくれたんだ。