「さっき、ひとりで教室行こうとしたろ」

え……?
まさかそのことを掘り返されるとは思っていなかった私は、驚いて瞬きを繰り返す。

「一緒に行くだろ、普通」

「っ……ぇ?」

そういう、ものなのだろうか。
いつもひとりだったから、みんなにとっての普通を私は知らない。

「俺とは、他人じゃないんだからさ」

他人じゃない、だったら私と君との関係は……なに?

クラスメート、友達、それから……。
一瞬、『好きな人』という単語が浮かんで、ドキリとした。

そんなわけないと首を横に振っていると、「冬菜」と名前を呼ばれる。

それにまた、トクンッと心臓が跳ね、一瞬時が止まったかのような永遠を感じた。

「ほら、行こうぜ冬菜」

教室の方へと足を向ける夏樹君に我に返ると、私は頷いて一緒に教室へと向かう。

「おーい、夏樹ー!」

「あ、冬菜ちゃーん!」

突然、後ろから名前を叫ばれた。
振り向けば、誠君と琴子ちゃんが駆け寄ってくるのが見えた。