「おい誠、とりあえず琴子を引きはがせ!冬菜が窒息死する!」

「あーはいはい。琴ちゃん落ち着いてー、どう、どうー」

どうどうって、馬を落ち着ける時にする声かけなんじゃ……。

「ふしゅー、落ち着いたぁ。誠くん、ありがとっ」

お、落ち着いたんだ……。
もう、この人たちって……訳が分からない。

今まで出会ったことのないタイプの人たちばかりで、困惑する。

どんどんペースに巻き込まれていて、嵐の中にいるようだ。

「戻ってきて安心したよ、大丈夫?」

「あっ……」

今度は貝塚くんに声をかけられた。
「大丈夫」、そう貝塚くんに言おうとしたけれど、やっぱり言葉が出ない。

見られてる……。
意識すると喉が締め付けられるように言葉に詰まって、顔が強張るのがわかった。

そう、まるで呪いのように動けなくなる。

「っ……う……はぁ」

頑張ろうとしても話せない現実に、私は静かにため息を零す。

出来ないってわかってて、どうしてやろうとしたのだろう。

今までの私なら、最初から話そうだなんて思わなかったはずだ。