「雑用係が見つける前に私たちが見つけちゃった~」

「ホント、使えない人たち」

「まあ、あんたらはお茶だしよろしくね~。どうせ演技しないで裏で暇してるんだから、それくらいきちんとやってよね」

「頼みますよ~…ーーって、蓮くん!!」


彼女たちの目の色が変わった。


私も振り返り、兵藤くんを見る。









かっこいい…






思わずうっとりしてしまった。

 
スパンコールがたくさんあしらわれた、キラキラの衣装を身にまとったら、益々輝きが増したように感じる。


廊下にいた他クラスの女子たちも彼を見るなり頬を紅潮させて黄色の歓声を上げていた。






中身的には冷たくて、別に惹かれないのに私の心を持っていってしまうなんて、やっぱり王子様だ。





ーーでも、私は結局シンデレラにはなれなかった。





澱んでいて底が見えず、ゴミがあちらこちらに浮いている湖のような汚い心を持つあの人たちに良いところを全部持って行かれてしまうんだ。



そう思うと見ていられなくて、私はそっとその場を離れた。






王子様は兵藤蓮くん。

シンデレラは宮脇円香。

魔女は遠野亜子。

意地悪な継母は夏川樹里。



主要なキャストは見事に持って行かれて、もう逆転ホームランは望めそうにない。



悲しくて

悲しくて

悲しくて

つらくて

つらくて

つらくて…




私はトイレにこもり、嗚咽混じりの涙を流した。


私はシンデレラになれないの?




神様は意地悪だ。