そんな感じで周りの生徒たちが彼を軸に生活しているのに対し、私は隣の席でありながらも確実に左には立ち入らないよう、細心の注意を払って過ごしていた。


彼が来てから、教室での明らかないじめ行動はなくなった。


でも、私が一人でいると悪口を言ったり、足を引っ掛けてきたりする。
そしてそれに引っ掛からないと不機嫌な態度をとられるため、私はわざわざ引っ掛かりにいっていた。


とんだ親切心。
こんな事しなきゃならないなんて、虚しい以外に言葉が見つからない。






ああ…
王子様がもっと優しい人だったらなぁ…

隣の私に毎日キラキラの笑顔を見せてくれたかもしれない。

いじめに気づいて、みんなを成敗してくれたかもしれない。

そしていつか私の今までの苦労が幸せに変わり、王子様と結ばれる…




しかし、そんなシンデレラストーリーは儚く消えた。

彼の性格、今の段階での心理的キョリから判断してこんな妄想が現実にはならない。

ずっと夢のまま…ーー






一瞬でも期待した私がバカだった。

彼のおかげで表面的ないじめが少し減っただけでもありがたい。

実質的には何も解決していないけど、とりあえずあと半年は、今までよりは穏やかに過ごせそう。





ありがとうございます。





心の中でそうつぶやいて、溢れ出そうな思いに蓋をする。

















やっぱり…ーーーできない。

思いを封じ込めるなんてできない。



とりあえず、夢は見させて下さい。

好きで居させてください。



ちらりと左に視線をずらす。

彼はシャーペンをクルクル器用に回していた。


目、合わないかぁ…ーーー





やっぱり私、バカだ。