「あっ、今のは聞かなかったことにして!心の声が勝手に口から…」


慌てふためく橘さんの顔は真っ赤。


とても可愛い。


「私が夜本君を好きっていうのは、周りには秘密にしておいてね」


「うん…」


“お願いします”と両手を合わせる橘さんに、コクコクと頷いた。


それじゃあ、さっきの“ヨルも…”って途切れた言葉は夜本君のことだったんだ。


それを私がヨルさんだと勘違いして……。


となると、橘さんの好きな人はヨルさんではない…?


いやいや、他の人からは“ヨル”って呼ばれているかもしれないよね。


「あの、橘さんに聞きたいことが…」


「ん、何?」


「夜本君って、“ヨル”って呼ばれてたりする?」


思い切って訊ねてみると、橘さんは瞬きを繰り返した。


「その呼び方は、初耳。“夜本”とか、名前で“光規(みつき)”って呼ばれてるのは聞いたことあるけど」


ということは、“夜本君=ヨルさん”ではなさそう。