「──さん、お鈴さん」
「あっ、ごめんなさい。えっと、何の話だったかしら」
目の前にいる彼と旦那様が重なってしまい、少し昔を思い出して呆けてしまっていた。
その姿を見た彼が心配そうに顔を除かせる。
私は大丈夫だと言わんばかりの笑顔を見せた。
彼は不思議そうな顔をするも、特に詮索することも無かった。
「あ、そうだ。あのね、総司くん、」
「待って、お鈴さん」
私が新たに話題を振ろうと口を開いたところ、そうはさせまいと遮った彼。
その意図に気づけない私はただ彼の顔を見つめるだけ。
少しの間 沈黙が続くと、向こうからポツリと口を開いた。
「お鈴さん、分かってると思いますけど、僕はもうすぐ死にます」
「……え、」
「貴方の前の旦那さんも労咳だったんでしょう?なら知ってるはずです、もう治らないって」
「でも、お医者様は治る事もあるって言ってたわ」
「そんなの滅多に無いですよ。それに、自分の身体は自分がよく分かってるんです。だからね、お鈴さん。最期に貴女に聞いて欲しい。僕の気持ちを」
突然 言葉にして突き付けられた現実を素直に受け入れられなかった。
そんな私を置き去りにして彼は話を進める。
「僕ね、本当は、今死ねて幸せなんです」