「普段から私の制服姿なんて、めったに見る機会ないじゃない。
夕方までベッドから出てこないくせに」


「ん、まあね」


「普段はこんなに早起きすることないから、今日はかなり眠いんじゃない?」


「まあね」


「ちょっとちょっとー!」


桜子の手がいきなり伸びてきて、ほっぺたを思いきりつねられる。


「イタタタっ……!」


「まさか式の途中に寝ないでよ?!
大事な妹の卒業式なんだからね!」


「寝ないっ!大丈夫だからっ」


桜子はパッと手を離すと、満足げに微笑んだ。


……痛いなあ、もう。


あいかわらずこの女の子は、外見に似合わない暴君ぶりを発揮していて、元気そのものだ。

お姉さんぶったかと思えば、子供のようにイタズラをして、僕をふりまわす。


おませな小学生の女の子とか、こんな感じなのだろうか。

僕には親しい親戚とかいないから、よくわからないけれど。