さっき着替えたばかりの外出用のドレスを
弄り、シリウスの言葉を待つ。

気色悪いピンクと黄色のドレスは終わり、
深緑と黒がベースのドレスに変わった。



これもフリフリなのは変わらなかったが、
少なくともメルヘンな天然と
思われるようなドレスではない。



「嘘はついていません。
実際あまりお金はないですから。

ただ、私がお嬢様と協力して会社を
建て直せば、今まで以上に会社は利益を
生むと確信できます。」



「結果的にカヴァネスを雇っても全く
経済的な被害を被らないわけですね。」



やっぱり私の当たりたくもない予想が
当たっていたのか。



「ええそうですね。
ですが、カヴァネスに教わるよりも私に
教わる方が効率が良いと思いますよ。」



その自信はどこからくるんだ……

まあ、歌に関しては認めざるをえないが。


多分、普通の人間なら私の歌を
良くしようと思う前に逃げ出している。

私の音痴さは絶対的な自信があるからな。


(ガラスをフォークで引っ掻いたような
声なんて言われたのは初めてだが。)



「効率、ですか……。
しかし、ダンスに関してはカヴァネスを
雇う他ないように思えますが。」



ダンスだけは、シリウスとしたくない。

セーラは
下手すぎて、私が練習できないし。



「ですから、わたくしと踊ってください。

お嬢様は女性ですから、リードしなくとも
いいので身長差など関係ありません。」



「嫌です。絶対。」



誰もが
高い身長を持っているとは限らない。


背が高く、その上ダンスが上手な
シリウスに慣れてしまっては、きっと
支障を来すだろう。

そういう意味でも
シリウスとは踊りたくない。



「ダンスには自信がありますのに。

18世紀初頭ではヴェルサイユ宮殿で幾度も
ダンスをこなしましたし。」



「フランスで?」



シリウスが活動している範囲は思ったより
広いのだろうか。

前も、ニホンにいたことが
あるといっていたな。



「ええ。私、結構色々な時代の有名な方と
お知り合いなのですよ?」



「ほう、そうですか。」



私が興味なさげにそう答えると、
会話が終了した。