「...お前って奴はほんと...そこは俺に言わせろよ。」



「えへへ...私から言う雰囲気だったんで...」



「...なんかお前の方が余裕でムカつく」




ちゅっと小さなリップ音。




余裕なんって、そんなのあるわけない


だって、好きな人と初めて心が通じあった瞬間だから。




興奮や胸の鼓動を抑えられるわけなんかないよ。





「...とりあえず無事に帰ってこれたんだし、ご飯にでもしましょうか!
零さんなに食べたいですか?」



「お前の好きなもの」



「...じゃあハンバーグにしようかな」



「なんでもいい。...おい朝日」



「はい?」



「俺も、出会ったその日からお前の事好きだった。
気まぐれで抱いた女をあんなに優しくしたのは初めてだ」



「えっ!?」



「ククッ...好きだぜ?一目惚れだったかもな...」





何を言い出すかと思えば


零さんは今までに見せたことない笑顔でそう言うと、私の赤い顔なんか気にせずにリビングへと先に行ってしまった。




「...零さんのばーか...」




やっぱりいつも余裕があるのは零さんで
彼の方が一枚上手みたい。





私は赤い顔を軽く叩いて、急いで夜ご飯を作った。