「こいつ、新しいキャプテンの大澤。ショートのやつ」


1人ずつ説明をしてくれる佐山さん。
ただ、1学年20人以上の大所帯チームなのだ。


「ま、ゆっくり覚えりゃええんやて」


キャプテンの大澤さんは、そう言ってニカッと笑った。

気になったのは、マネージャーがいない。

確か、いないはずはなかったのだが...


「んで、マネジは?」

「今日は全滅っすわ。あ、新入りちゃんがいるか」

そう言って私の方を見るキャッチャーの選手。

谷口さんというらしい。


「好きなやつだけ来ればええ。ホンマに、野球の好きなやつだけ。マネージャーも選手やからな」


そう言った佐山さんの大きな手が、私の頭にそっと降りてきた。

まるでお父さんのような、お兄ちゃんのような、温かくて大きな手だった。

少し、心が跳ねたのは、私の気のせいだろうか。