「と、いう訳で逃げるぞ、不思議の国の迷宮へ!!」






「は、はい?」








楽しげに笑う翼先輩にただただ嫌な予感しかせず、表情を歪ませる。





そしてそれは見事に的中した。








「風よ!!我と他の者を望む場所へ運べ!!」







パァァァァァッ







翼先輩の詠唱と共に薄緑の光が翼先輩と私を包み込む。




………詠唱の内容からして私を共に連れていくのだろう。









「え!!?ちょ、翼先輩!!?紗久連れて行かれたら困りますっ!!」






「悪ぃな、田吾作……じゃなくて、ノエル!!紗久は借りてくぞ!!」








私が声をあげるより先に異変にいち早く気づいたノエルが焦りながらも翼先輩に文句を言うが翼先輩は笑顔で軽く謝罪するのみ。



その謝罪にはもちろん反省の色はない。







「た、たたた、た、たごっ、た、田吾作って呼ぶなぁぁぁぁぁ!!!!」






目の前で怒りの叫び声をあげるノエル。





これが移動前最後に見たものだった。







今回も面倒事に巻き込まれてしまったようです。