ドアの前で足を止め、一度だけ小さく深呼吸してから、チャイムを鳴らす。



ピンポーン



家の中から、微かに電子音が聞こえてきた。



昔から何度も押してきたチャイムだけど、鳴らしたのは久しぶり。


らしくもなく、少しだけ緊張してしまう。



背伸びをして押していた頃もあったなぁと、小さい頃の日々に想いを馳せていると、家の中からこちらへ向かってくる足音が聞こえてきた。



そして足音が止まったかと思うと、ゆっくりとドアが開く。



ドアの向こうから姿を現したその人物は、ドアの前に立つ私の姿を見て、目を見開いた。



「は? 十羽?」



「来ちゃった」



ニッと笑う私に、楓くんがドアを開けた前傾姿勢のまま、呆れたような引きつった苦笑いを浮かべる。



「ははー。……なにこれ」