楓くんの顔は、こちらに背を向けているせいで確認することはできない。
困っているならいち早く助けに入りたいけど、私じゃムリだ。
だから、こうして待合所の入り口から窺える範囲で事の成り行きを見守ることしかできなくて。
楓くんは声を抑えているものの、女の人は感情的になっているのか声を張り上げていて、その声は時折ここまで聞こえてくる。
「私は楓じゃなきゃイヤなの!」
楓くんよりも年上、恐らくは社会人の女の人は、遠目でしか見えないけどすごく綺麗だ。
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