モデルルームの展示会も無事に終わり、企画チームも解散となった。


 チームのメンバーや、現場の職人達と打ち上げの話が上がり、私は幹事を命じられてしまった。


 課長とはあれから特に話をする事も無く、何事も無かったように過ぎていた。


 企画チーム最後の日、オフィスの中で課長の挨拶と拍手で終わりとなった。


 昨日の、展示会まで慌ただしく、疲れが溜っていた。

 定時を過ぎ、コーヒ―を買いに自動販売機へ向かう。

 さすがにこの時間は誰も居ないと思ったのだが、長椅子に横たわる人の姿があった。


 夕日が微かに、顔を照らしているのは課長の姿だ。

 夕べも片付けなどで、遅くまで展示会場に居たのだ、疲れも溜まっていたのだろう……


 自動販売機からコーヒーの缶が落ちる音にも気付かないで眠っている。


 私は長椅子の前に立ち課長の顔をじっと見た。


 一度だけでいい、ずっと触れたかった……


 震える手でそっと課長の頬に触れた……


 暖かくて、触れただけで幸せだと感じてしまう……


 私は床に膝間付き、そっと課長の顔に近づくと、唇を重ねた……


 涙が頬に伝わり、重ねた課長の唇に落ちた……


 ごめんなさい…… 


 これであなたの事は忘れます……


 ちゃんと、心に鍵をかけます……