「お兄さん、もう1度言うよ?」


「ぁ‥‥‥」


少年は鉄扇子で、男の顎を捉える。


一瞬、まるで真冬の夜に吹き荒れる吹雪のように冷たい表情が覗いた。


男に顔を近づけ、少年は言った。


「盗んだ物を出せ」


「は、い‥‥‥」


男から出たのは、それだけだった。










「はい、お姉さん!」


「小さな隊士さん、本当にありがとう」


「大したことないですよ。お仕事ですから!」


男がポカンと少年を見つめる。


さっきの冷たい表情が勘違いだったと思わせるほど、明るい太陽のような笑顔だった。


「剣壱!」


「あ、平にぃ!」


声のした方を見ると、浅葱色の羽織を来た集団がやってきた。


「怪我は無いか‥‥‥って‥‥‥」


1番前の若い男は、縛られた男を見て苦笑いを浮かべた。


「剣壱、お前‥‥‥何したんだ?」


「万引き?スリ?の人を捕まえた」


「突然走り出したかと思ったらこれだ」


「ちょ、何で頭抱えるのさ。少しくらい褒めてくれたっていいじゃん」


どうやら少年は勝手に行動したようで。


若い男は少年を見ると複雑は顔をした。


「あのなぁ、単独行動は控えろって土方さんも言ってただろう?」