ベンチで缶コーヒーを飲みながら僕らは、じっとしていた。


僕が煙草を吸うために灰皿のある場所まで行ってくると言うと彼女は頷きながら煙草は身体に悪いよーと笑いながら言った。


僕は、急いで煙草吸うとベンチに戻った。


彼女は、突然僕にしがみつくように抱きついて来た。


「尚ちゃん、サングラスを二人で外そうよ。

二人なら外せそうな気がする。

尚ちゃんもパニック障害や鬱が有るから嫌なら言って」


僕達は新緑をなるべく見たくない為にサングラスを掛けていたのだ。


体が密着すると彼女の香水の匂いが微かにして彼女の必死さが僕に伝わって来た。


五月は僕達にとっては辛い季節だった。



彼女程酷くは無いが、僕にもパニック障害と鬱があった。


二人で同時にサングラスを外した。


彼女は、うわー!!と小さく叫ぶと僕の方を向いてキスをしてきた。


それも軽いキスでは無くて濃厚なキスだった。


舌の動きから僕は彼女の不安を感じた。


僕も煙草の臭いを気にせずに舌を絡めた。


まるでそうして二人で会話をしているようだった。


周りの目など気になら無かった。


その瞬間は公園には僕と彼女だけのような錯覚に陥った。


地球上に二人だけなら良いとさえ思えた。


彼女は、キスを終えるとサングラスを外したまま僕がベンチに置いていた煙草とジッポのライターを取ると口にくわえて火をつけた。


吸い込むと少しむせながらも煙を目で追っていた。


「煙はいいね。だけど煙草は美味しいのか分かんないな」


そういうとそのまま僕の口に煙草を押し込むように入れた。