「仕方ないよ、好きになるってそういうもんだもんね」

違う。

「お互いさ、そういう遠慮しないで」

こんなこと。

「頑張ろうね」

いい子ぶりたかったわけじゃない。

言い切った自分を、空恐ろしい目で見る自分がどこかにいた。
物わかりの良い返事をするつもりもなかった。

だのにどうして、こんなことしか言えないんだろう。胸の奥にしまっていた言葉はこんな言葉じゃなかったはずなのに。

どうして拗れてしまうんだろう。

「よかった…ごめんね」

胸を撫で下ろした友人を見ていると、訂正も出来ない。

吐き出した息が重苦しくて、知らずのうちに息を詰めていた。

笑顔なんて、作れているのだろうか。
不安げに小夜の顔を覗き込みながら、そう考えた。

心配させては悪いのに、誰かに気づいて欲しい私がいた。