車のなかで揺られ、
一時間。
私は一切、外を見ていない。
もし、同級生を見たら、
私でいられなくなる。
「さ、ついたぞ」
雷おにぃちゃんが、
うつむいている私に呼び掛ける。
私は、
全てが聞こえていないわけではない。
大きな声でしゃべってもらえれば、
聞こえるのだ。
とくに、雷おにぃちゃんの声は、
よく聞こえる。