誰と話していても頭の片隅に君がいて、どこかでその笑みを思い出している。

笑顔だけで、その存在だけで人を惹き付ける人って本当にいるのだなと思い知った。

誰でも受け入れてくれるような優しいのに僅かに寂しげな笑みを、また見たいと思わせる、そんな人だ。特に目立つこともしていないのに、自然体で人を集める雰囲気の持ち主。

違うなぁ、と気弱に呟いた。

全然違う人みたい。例えようとしても、月とスッポン。

それでも少しでも近づくために、踏み出した一歩を無駄には出来ない。

新たに決意を固めた葵は、風呂の準備を済ませて階下へと向かった。